2018年10月3日 6回目のこんにちは




土屋さんと面会のため、三週間ぶりに拘置所へ。

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4番面会室で

初めての4番面会室。多分。

ちなみに、1番から5番面会室までが、建物10階の真ん中より左に位置しており、5番面会室の隣が受付、続いて6番面会室へと続いている。何番まであるのか判らない。

わたしは初めての4番面会室に入り、いつもの左端のパイプ椅子に着席(土屋さんからみて右端)してすぐ、土屋さんが刑務官と共に入室。

土屋さんは一枚の紙を持っていた。絵を描いたらしい。

その紙にまず目がいった私は、彼が座る前に

「何描いたんですか?」と訪ねた。

彼は着席する前に、遮蔽板越しのわたしに絵を向けて見せた。

桜の絵だった。背景が黒。夜桜のよう。

以前(6月13日、2回目のこんにちは)、私に送ってきてくれた絵よりも、スッーっと、こざっぱりとした線で描かれた花びら。お化粧された綺麗で淡い桜色。儚さは健在だが、ずいぶんと印象が変わった。どこかで自信を付けたのだろうか。そして、とても丁寧に、一画一画に思いを込めて描かれたことが伝わってくるような絵。

わたしは桜の絵を描いて見せてくれたこと自体が嬉しくて、どういう気持ちで描いてくれたのか聞きそびれてしまった。後に後悔。

完成したら、また頂戴したい。

「聞かれたくないことは?」「ないです」

東拘で土屋さんと面会したいという方がいるため、橋渡しをすべく面会予定日を伝えるなど、事務的な会話をした後、今日の本題へ。

「(代理人を務めた弁護士の)先生に、取材okの返事をもらえました」と伝えると、

そうですか、とあっさりした様子を見せた土屋さん。

私は、土屋さんから教えてもらった弁護士の先生方の内、一審の主任弁護人を務めた先生にあらかじめ手紙を書き、取材の申し入れをしていた。

数日後、取材許可をもらい、取材日まで決めていたため、その報告をした。

取材の申し入れの際、先生から、

センシティブな部分については、事前に土屋さんに了解を得ておいておくよう促されたことに加え、

わたし自身、彼が聞かれたくない内容については把握しておきたかった為、聞いた。

「わたしが先生に取材するにあたって、わたしに聞かれたくないことはありますか?」

「ないです。」

即答だった。

「センシティブなことも聞くことになります。晒されたくないことは・・・」

彼はわたしの質問を最後まで聞かず

「ないです。」

と言った。

よかったです、とわたしは言葉を返した。

少し、沈黙になった。面会室の中は、二人の声しか音がないため、ふいにピタッと静まり返ることがある。その度に、何となく気まづい空気が流れる。

土屋さん自らが積極的に話をしないため、こちらから話題を持ち出すことが多い。質問を用意していないと、15分という短い時間の中でも必ず、沈黙の時間が流れる。

その空気、気まづさを、互いに感じながら、私は話題を変えようと、世間話を持ち出した。親知らずを抜いたこと。

そのうち、刑務官に「そろそろ終わりです」と告げられた。面会終了時刻が来た。いつもは終了3分前に教えてくれるのに、今日は教えてくれなかった。いつもと違う刑務官だった?土屋さんの隣にいることなど気にせず話すため、判らないのだが。

土屋さんは刑務官の言葉の後、すぐに起立し、面会室を後にした。水色のジャージ、半パン、灰色っぽい靴下にサンダル。

聞かれたくないこと、一つや二つはあるだろう?と、わたしは誰もいなくなった面会室で一人、そんなことを思った。

なぜあれほどまで淡々としているろだろうか。土屋さんの見返りを一切求めないような態度を1度目の面会からずっと見てきた。彼はまるでそれを貫くようにしている。

彼に聞きたいことは沢山ある。知りたいことが山ほどあるのに、傷つけてしまわないだろうかとばかり気にしてしまう自分がいる。

私は年末には都内から離れた場所で生活する。時間がない。せっせと進めなければいけないのだ。自分に言い聞かせ、面会室を出た。

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ひとりごと

この間の土屋さんとのやりとりを、私は自身のメンターに話していた。

すると、ハッとさせられる言葉をかけられた。

「あなたの取材には穴がある」と。

返す言葉がなかった。帰宅してもなお、その言葉がずっと胸に刺さったままだ。自身のライターとしての役割、使命感、覚悟を今一度、考えている。

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