2018年6月13日 2回目のこんにちは




 

前回の面会から約1ヶ月後のこの日、私は彼と3回目の面会を果たした。

彼の安否確認も面会の目的の一つたが、今回は、彼が描いた桜の絵を見るのが一番の目的だった。5月16日付の手紙に、「桜の絵を描いて欲しい」と依頼していたのだ。

その目的を果たすため、日本各地に梅雨入りの便りが届き始めたこの日、私は再び東京拘置所へ足を運んだ。

面会手続き

拘置所では、面会手続きを済まさなければ、面会が認められない。

手続き票なるものに記入をし、窓口の刑務官に提出し、さらにそれを複数の刑務官による確認を経て、初めて面会許可が降りる。この一連の手続きが認められなければ、面会は許されない。

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5番面会室ー対話の時間

10階に上がると、5番の面会室に案内された。いつもは1番室だが、どういうわけか、今日は初めての5番室。彼が入室して来るまでの時間も、緊張しなくなっていた。

土屋氏は、一枚の紙を持って入室してきた。

いつものグレーのスウェットではなく、濃い青のTシャツに黒い半パンを纏い、くるぶしが隠れる長さの靴下に、黒いサンダルを履いていた。髪も切り、少し涼しげだ。

まず話題はストレッチマンに。漫画の構想の参考になりそう、とのこと。安堵した。

スケッチブックは買えたかと尋ねると、物を購入するためには商品コードが必要だそうで、「スケッチブックの商品コードが判らない」と申し訳なさそうに漏らしていた。同時に彼の目線は隣に居座る刑務官に。商品コードを教えてもらいたかったのだろう、目で尋ねるも、刑務官は気づかなかったのか、なんの反応もなかった。無視、というやつだ。

そして絵の進捗を尋ねた。約束通り、桜の絵を描いてくれたというのだ。

私は「書いた絵、見せてください!」と言った。張りのある声が室内に響く。

彼はおろおろと、便箋紙の裏に描いた桜の絵を、遮蔽板越しに見せてくれた。

細い枝に何輪にも連なる桜が、儚げに咲いている絵。シャープペンシルで花弁は繊細に施され、要所には薄赤い色が添えられていた。

彼の持つ、独特な筆圧の強さはそこに無く、全体的に弱々しさを思わせるほど、弱く細い線が重ねられていた。

絵には心を映し出す要素があると私は思っている。彼の書いた桜の絵から、どことなく彼の心情を垣間見た気がした。絵を見つめるたびに、細い針でチクリと刺されたような地味な痛みが心中に走る。どこか自信に欠けた弱々しさが紙一面に満遍なく漂っていた。

「その絵、送ってください」と言うと、彼は謙虚に頷いた。

面会時間の15分が過ぎようとしていた。

最後に私は、「色鉛筆とスケッチブックの差入方法を調べてみます」と伝え、面会室から出て行く彼を見送った。

 

 

ひとりごと

数日して、その絵が郵送で送られてきた。

白紙の部分に、少し色が添えられていた。手を加えたのだろう。ただ、儚く弱い印象には変わりない。

その絵が今も脳裏に張り付いたまま、私の心を捉えて離さない。

 

 

 

1313字

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