2019年7月29日 10回目のこんにちは




3週間前に手紙を送ってから、返信がないまま面会の日をむかえた。

前回の面会は2月15日であったから、5ヶ月ぶりの拘置所だ。
土屋死刑囚と面会の約束(私がやや一方的に)をしていたこの日、東京では梅雨明けが発表されていた。

窓口でいつものように手続きを進める。そのとき面会時間が変更になったという旨のお知らせを目にした。面会時間が5分長くなっているのだ。
これまでの面会時間は15分だったのが、20分に変更されていた。

割と早めに拘置所に着いたからか、手続きはスムーズだった。

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1番面会室

10階に上がるとすぐに"1番"の面会室に案内された。
今日は何故か拘置所内の照明が暗く、遮蔽板越しの扉の小窓から土屋死刑囚の表情を確認することができなかった。
間も無く入室してきた土屋死刑囚は、グレーのTシャツに短パン姿で、青い靴下にサンダルを履いていた。
私の顔を確認すると軽く会釈し、無言のまま着席した。

「制度の問題ですかね」

会話の序盤はいつも、私のどうでもよい話から始まる。沖縄での暮らしのこと、仕事のこと。
その間、土屋死刑囚はだいたい表情を変えず聞いている。特に質問もない。
そろそろ話をしてもらおうと、私は話を振った。

私「気分はどうですか?」

土屋氏「・・・。いろいろと被害者に(対して)何かできないかとか考えるんですけど、何をしたら良いのかわからなくて」

いきなり見当違いというか、的外れな回答が返ってきた。こちらはそういうことを聞き出そうと思っていなかったのにだ。

私は少し驚いたが、そのまま話を続けた。

私「どういう風に、何をしようとか、考えていることはあるんですか?」

土屋氏「・・・わからない、、ですね。何をやったら伝わるのかとか・・・。」

そのあと、彼はボソッと

「制度的な問題ですかね」

と嘆いた。

私は何と言い返せば良いのかわからず、少しの沈黙が続いた。

横に座っている刑務官が「そろそろお時間です」とアナウンスする。

私はそれのアナウンスに合わせて、
「また、東京に来るときは手紙なりでお伝えしますね」とだけ言った。

そのあとすぐに土屋死刑囚は退室し、自身の独房に帰っていった。

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ひとりごと

「制度的な問題」
とは何だろうか。土屋死刑囚が発した言葉の意味を、私はしばらく考えていた。

そういえば私が面会し始めた頃にも、この言葉に似た発言をしていることに気づく。
たとえば面会人からの差し入れの限度を知らしめられたとき。
ある時は、購入したいもの(当時はスケッチブックと色鉛筆)がなかなか手に入らなかったとき。
そして今回も。
欲のようなものを覗く。そしてどうにもできない現状に嘆いている。

もしも、「制度的な問題」を何か一つでも解消できたらという願いが彼にあるのならば、
私は身勝手ながらもそれをなんとか行動に移してくれないかという思いをいだいてしまう。無意味な感情だろうか。

それから、いきなり言い放った罪の意識。
彼から焦りのようなものが滲み出ているように感じる。何のメッセージだろうか。そのメッセージを掘り出し、受け取り、紡いでいく時間は、そう長くはないのかもしれない。その予感が私のことも焦らせるのだ。

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