2019年3月21日 19通目




私が送った18通目の手紙から約2週間後、土屋さんから返信がきた。

封を開けると、5枚綴りで余白もないほどにびっしりと書かれていた。先日、土屋さんの最後の職場(前橋市の警備会社)の元上司を名乗る村田さん(仮名)からのメッセージを土屋さんに転送しており、それを読んでの感想が述べられていた。

村田さんのメッセージとは、土屋さんに対しての残念な気持ちと共に、事件を止めることが出来なかった村田さん自らの反省や無力さという、申し訳ない思いがまとめられたものだった。また、事件を振り返り、罪を償い、最期の時まで生きて欲しいという願いがにじみ出る様子もうかがえるものだった。

そのメッセージこそ、土屋さんの心の内を強引にえぐり出してしまったのだろう。彼からの余白のない5枚の手紙は、込み上げる憎しみを抑えきれず、行き場のない怒りを用紙いっぱいに殴りつけるように書き詰められていたのだ。過去の苦しみに満ちた出来事が突如として鮮明に思い出されたのかもしれない。過去に蓋をし、心の奥底に押し込んでいた触れられたくない思いを、私は無責任に呼び覚ましてしまったようだ。まだ土屋さんは私を含む「外」の人に信頼を置くことができない。にも関わらず、閉ざされた重い心の扉に手を掛け、その奥に無理矢理手を伸ばすような行為を、私は早まっておかしてしまった。

土屋さんの心に未だ蓄積され続けている、彼自身に強いられた理不尽、そして行き場を失った感情の混沌を私は目の当たりにした。

私はしばらくの間、土屋さんからの手紙を読み返していた。土屋さんの生々しい体験談が何度も何度も胸に痛く刺さる。

良かれと思って取った行動が、これほど人の心に傷を負わせてしまうものなのか。自らの想像力の欠如、身勝手な思いやりと言動に対する謝罪の気持ちをすぐに伝えなければと思い、私は翌日ペンを執った。

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2019321土屋和也さまへ19通目

土屋和也さま

こんにちは。返信ありがとうございました。20日(水)の夜、仕事から帰ったら、家に届いてました。

どうやら土屋さんに、ご自身のお辛い過去を思い出させてしまったようです。

私としては良かれと思っての行ないでしたが、結果、お辛くさせてしまい、申し訳ありません。

取り急ぎ、ご返信まで。

2019/03/21 河内千鶴

ひとりごと

土屋さんが自身の心の奥に眠らせていた感情。それを見たのは、この時の手紙が始めてだった。いつも淡々と無機質で、内容も虚しい便りが多かったが、この時の手紙は感情的で否定的な言葉が並べられ、読み進めるほどに息が詰まり、目を離したくなるほどであった。

同時に、ふと、彼は自らの思いを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない、と感じる私も居た。この思いはあまりに都合が良すぎるだろうか。

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