響かせあおう死刑廃止の声2016




今秋も「響かせあおう死刑廃止の声2016」が牛込神楽坂区民センターで開催された。(来年の日時会場も既に決まっている。)

毎年、世界死刑廃止デーの10月10日前後に開催されるこのシンポジウムは、今年で12回目。今回のテーマは〈死刑と憲法〉だ。
弁護士の伊藤真さんや袴田事件弁護団の小川秀世さん、刑法学者の平川宗信さん、参議院議員の福島みずほさんらが登壇者された。わたしたちの暮らしに身近な憲法の視点から死刑制度を読み解き、多角的に討論を展開された。プログラム自体が4時間という長丁場とはいえ、時間の経過さえ体感させないほど、有意義なときとなった。

このシンポジウムで毎年、ほとんどの人が呆気にとられたかのように眺めるのが、死刑囚たちが描いた絵画だ。
プロの絵描きが描いたかと思わされるほど、美しく逞しい作品たち。一画一画が波を打つように力強く、それでいて丁寧にほどこされたものばかり。
私にはそれらの絵が、彼らが必死に生きている証のように見えた。確かな更生を示し、生きて償うことを訴える、静かな抵抗かのように。彼ら彼女らの胸の鼓動さえ感じてしまうほど。
どんな思いで描いたんだろうと、私はひとりひとりの死刑囚に思いを馳せていた。

展示ブース内に、電話ボックスほどの大きさの箱があった。中を覗くと真っ暗だ。側に用意されたペンライトで、その中に展示された絵を照らす仕組みになっていた。
箱の中には縦横それぞれ3枚ずつ、合計9枚の色紙が大きな正方形となり、びっちりと壁に貼り付けられていた。一目観ただけでは、ただの真っ白い色紙にすぎない。だが光を当て目を凝らすと、いろんな形が浮かび上がった。彫刻画という表現が一番近いだろうか、色紙の柔らかな紙質を活かし、表面に凸凹を創って影を創造し、一つの絵画を完成させていた。

私はその展示が、交流している伊藤和史死刑囚(通称:カズさん)の作品であることに気づいた。
彫刻画ならぬ、カズさん独自の絵画は、たくさんの緑の葉に囲まれた中に湖があり、そこを優雅に泳ぐ二匹の白鳥が居た。私の語彙力だけでは表現しきれないほど、ひたすらにうつくしい絵だった。私はしばらく、ただただじっと見つめた。今年の春に、死刑確定という形で強制的に交流が経たれたカズさんに対する、再会を願う想いが溢れてくる。

でも、会うことはできない。
刑が確定すると、死刑囚は外部との交流を極端に制限されてしまう。法律でも定められていない、誰が決めたのか判らない拘置所のルールだ。

シンポジウムが進行する傍ら、私は死刑確定囚の身となった伊藤和史さんの優しい笑顔を思い返していた。

 

1071字

スポンサードリンク