「あなたの愛する人が殺されても、死刑廃止と言えますか?」




犯罪被害者支援弁護士フォーラム(VSフォーラム)の『国民が求める刑罰制度について』シンポジウムに参加した日のこと。

会の途中からずっと、心にいろんな感情が入り乱れるようだった。知らなかったかなしみに触れてしまったからだ。言葉で表現しきれない思いが心を覆う。

そのシンポジウムでは、私と考えの異なる遠い存在の知識人たちが名を連ねていた。金田法務大臣や産経新聞論説委員、厳罰化を求める弁護士たちが次々に登壇し、演説をしていた。その間わたしは、彼ら彼女らの熱弁を右から左へ流すようにボウっと聞いていた。恐らく不服な表情で、時間の経過を待っていた。

そして、被害者遺族・磯谷富美子さんのスピーチが始まった。私はこの方の言葉を聞きにやってきたのだった。

磯谷富美子さん。2007年、名古屋の住宅街の一角で起きた『闇サイト殺人事件』の被害者遺族だ。事件発生の3日前『闇の職業安定所』というサイトを通じて出会った被告3人が、当時31歳だった磯谷利恵さんを自宅近くで拉致。現金を奪い、その後殺害した。裁判では主犯の被告人に死刑、残り2名に無期懲役の判決が確定。刑確定後、無期懲役囚らの残虐かつ執拗な殺害方法をはじめ、法廷での更生が期待できないような態度に多くの人々が憤った。

事件当時の様子を話し出す、磯谷さん。
当時のひとつひとつの場面を悔しさに満ちた表情で、終始怒りを抑えながら、震える声で一人一人に迫るように語っていた。その話の内容が想像させるのは悪魔のような犯人像と、殺された利恵さんの恐怖に満ちた命乞う表情だった。気づくと私は泣いていた。完全に感情が移入していた。自然と涙がこぼれ出ていた。

このシンポジウムで自身のこれまでの死刑制度に対する考えを見直すべき時が来ているのかとさえ思わせられるほど、強すぎる衝撃を受けた。受け止めきれない傷みと息苦しさが、全身に纏わりついて離れない。遺族の方々の苦しみ悲しみ、伝わらない痛み、救われない声。“弱きもの”たちの現実が置き去りにされゆく実例を目の当たりにした瞬間だった。

亡くなった人は戻ってこない。せめて被害者遺族を本当に救う方法は何だろう。何度も、自分に問う。『死んで償う』ことで、救われる命があるかもしれないのか?と。

更に磯谷さんは続けて「死刑廃止を訴えている人に聞きたいことがあります」と、客席に投げかける。

「あなたの愛する家族が殺されても、それでもあなたは死刑廃止と言えますか?」と。

あなたなら、何と答えるだろうか。

スポンサードリンク